ホイップのメンバーを紹介しよう。

 まずはユイユイこと、小林唯さん。

 十七歳のエービー型。身長は女子にしては高めの百六十。しっかり者の姉御肌で、グループのリーダーを務めている。綺麗な長い黒髪が特徴の、大和撫子だ。

 次はほたっちこと、ほたるさん。

 梨花が勝手にライバル視しているからか、苗字は聞いたことがない。十五歳のO型。身長は梨花と変わらないくらいだけれど、バストは梨花よりかはある。

 プリティーな発言が多くて、可愛い妹系のキャラだけれど、梨花はぶりっ子だと言って認めない。仕方ないな、あいつは妹ってキャラじゃないからな。

 そしてダテリカこと、梨花。

 先月の9日で、十六歳になったばっかのA型だ。姉御肌キャラはは唯さんで、可愛い系をほたるさんに取られている。

 そのせいで、どっちつかずの中途半端なセンターだ。一人称がダテリカ様って言うせいで、高慢に見えて仕方ない。

 それでも分かりやすいキャラなので、適当に「ダテリカ様は~」って言っていればいいだけ。

 内容も図々しい発言を中心にやってたけれど、まずかったらカットするだろう。なんやかんや、その日の撮りは無事に終了した。

 冠番組じゃなくバラエティのゲストだったから、発言が少なかったのが、せめてもの救いだった。なんせ今日は天とキスしていないから、共痛覚で偏頭痛と偏腹痛も併発していたしな。

 楽屋に戻ったホイップ一同は、適当に挨拶を済ませて解散となった。

 特に唯さんは今年大学受験だっていうから、足早に予備校へと直行してしまった。楽屋には梨花に扮した俺と、ほたるさんだけが残された。

「っていうか、ソラくんだよね?」と、ほたるさんが半笑いで俺の方を見て言った。

「何をおっしゃいますの、ほたるさん。このダテリカ様が」

「そういうのいいから」

 俺の演技が仰々しすぎたのか、ほたるさんはクスクスと小さく笑った。

「大体、梨花はわたしに"さん付け"しないし」

「……でしたよね」

 そういえば、入れ替わったのは一年ぶりくらい。その間は唯さんとも、ほたるさんとも会っていない。

 そりゃあ梨花と、どう接していたかって、忘れるわけだ。一度覚えた事は忘れないっていうの、やっぱり俺の勘違いなのかもしれない。

「でも、今日はソラくんで良かった」と、ほたるさんはニッコリと頬笑んだ。

「梨花、最近調子悪いみたいでね。やたらとわたしに突っかかってくるの」

 彼女の苦笑いを見て、俺は違和感を覚えた。ほたるさんって、こんな大人びていたっけかな。

 以前は逆に彼女の方が、姉に突っかかっていた方が多かった気がするし。そういうのがあったとしても、プリプリと可愛く怒っていた。今は何ていうのだろうか、まるで梨花を年下の子みたいな扱いをしている口ぶりだ。

「ソラくんは、こっち引っ越してきてどう? いい街でしょう?」

「……そうですね」

 確かに、この街はいい所だ。緑は多いし、東京なのに空気も綺麗だ。何より大好きな従兄と、大好きな恋人が居るんだ。悪い街なんて欠片も思う訳がない。

「従兄がこっち、住んでいるんだって?」

 俺は頷いてから思った。梨花とほたるさんって、そんな個人的な話すらもするような仲だったっけかな。

「わたしも、こっちに従兄住んでるんだよね」

 いつか自分も従兄とこの街に住みたい、ってほたるさんは言った。彼女もまた梨花みたいに、ブラコンの気のある女の子なのかもしれない。

「……そういえば、ほたるさんって。なんて苗字なんですか?」

「あれ、知らなかった?」と、ほたるさんは控えめに笑った。その仕草が誰かに似ているような気がしたけれど、すぐには思いつかなかった。

「若葉田っていうの」

「わかば……だ」

 この珍しい苗字は、聞き覚えがあった。どころではない。その名前を聞いた瞬間、とある人の顔が鮮明に頭に浮かんだ。

「若葉……田、皆結希……せんぱい」

「みっ、皆結希を知ってるの⁉」

 彼女は食い入るように、俺へと身体を近づけた。

 何となくって思ったけれど、苗字を聞いた瞬間にそうじゃないかって思っていた。こういう予感って、たいてい当たってしまうんだ。

 ほたるさんは、わかば先輩の関係者だ。