そして、我々スイーツユニオンが向かったのは、毎度おなじみの喫茶店だった。

 公園のど真ん中に立つログハウスみたいな建物は、まるで避暑地の貸別荘のようにお洒落で綺麗な建物だった。

 内装も全体的に木目調で、テーブルや椅子も木で出来ている。まるでキャンプに来たみたいな感覚になるけれど、口にするのは甘いものなのだ。

 いつもの窓際の席に案内されるけれど、いつもと違うのは俺の隣に可愛い彼女が居ることだ。相原が気を利かして、まずは天へとメニューを広げた。

 彼女が瞳を丸くしたのは、思っていた以上にメニューが多かったことらしい。

 地元民だから、ここの存在は知ってはいたけれど、今まで一度も足を運んだことが無かったのだと。俺は素直にもったいないって思った。

 何がいいって聞いたら、同じがいいって言った。彼氏とお揃いがいいって、俺の彼女はなんて可愛いんだ。

「おっしいはどうする?」という相原の問いに、俺は迷いなく「もちろん、新商品」と答えた。

 夏の新作は、何と生地に抹茶が混ぜ込められているものだ。暑いのもあって俺は、あんことアイス入りの抹茶クレープを選んだ。天もこっちと同じで、相原は白玉チョコの抹茶クレープだった。

 暫くすると、注文の品が運ばれてくる。この店のクレープは手に持って食べるのではなく、皿に乗って出てくるという珍しい形式なのだ。俺は早速、ナイフとフォークを使って、大きな一口目を頬張った。

 ひんやりしてるっ。

 店内は冷房が効いてはいるけれど、それでもこの時期のアイスって奴は格別だ。小豆の甘さとアイスのクリーミーさに加えて、もちもちの生地に抹茶のほのかな苦みとか最高すぎるに決まってんじゃん。

 何でこの世界って、色々な種類の甘いものが多いんだろう。そして、甘いものと甘いものを合わせて、イチ足すイチを百にでも出来るんだろう。

 前世がどうだったとか分からないけれど、間違いなく俺はこの世に生まれて大正解だって思ってしまう。

 ありがとう出会えた事、幸せな時に感謝して進んでいけるって思った。好きな人と一緒に、好きなものを食べれるって、この上無く最高なんだって。

 と、喜びに浸っているのも、ここまでにしよう。今日はスイーツユニオンの活動だった。俺はクレープを半分に切り分けると、皿を相原の方へと差し出した。

「えっ!」

 何故か相原が、妙なものでも見たかのような顔つきになる。

「今日もそれやるの?」

 俺は相原の言っている意味が、何も分からなかった。ここに来るってことはスイーツユニオンの活動なんだから、半分こするのはいつもの事だろう。

「ちょっと、天。こんな彼氏でいいの?」

 思いもよらぬ相原の台詞に、天の方を見る。俺の可愛い彼女は、心なしか不機嫌そうな顔になっていた。

「……光って。おっしいと、いつもこんなことしているの?」

 天の台詞に相原がバツの悪そうな顔になる。俺は二人のやり取りを、全く理解が出来なかった。

「どういうこと?」

 俺が言うと、二人が同時にため息をついた。呆れたような顔をされた理由が分からない。何かよくないことでも、してしまったっていうのか。

「おっしいは、もう少し。……女の子の気持ち、考えた方がいいよ」

 ごめんね、天。と相原は言って、食事を再開した。そういう雰囲気じゃなくなっちゃったから、俺は相原の食べていた方を我慢せざるを得なくなってしまったのだった。