この痛みは兎にも角にも、薬が全く効果ないっていうのが腹立だしい。体育といった運動には全く影響は無いけれど、何といっても勉強には集中出来ない。俺が単に勉強嫌い、ってのもあるかもだけどさ。

 とにかく何でか今日は、いつもより痛みが強い。さっさと帰ってゲームでもしよう。昇降口に立ち、自分の下駄箱を開けた。

 すごい物が入っていたような気がしたので、一回閉めた。

 どっちだろう、って俺は思った。

 もう一度、今度はそっと下駄箱を開けてみた。

 二度見しても同じで、我が靴の上に一枚の手紙が乗っていた。

 さて、どっちだ。果たし状か、ラブレターか。

 果たし状だとしたら、俺がクロの従弟だって、知って出したのかよ。

 我が従兄である押立鉄は、中学の時に剣道部の奴を倒したという伝説がこの学校に残っている。勿論、今も昔も剣道は全くやっていない。そんな腕を持つ男の従弟に、挑戦状とか笑ってしまう。俺をボコボコにしたら、剣道未経験者およそ千段のクロが黙っちゃいないぞ。

 ラブレターだとしたら、俺が男だって、知って出したんじゃないよな。

 我が姉である押立梨花は、ホイップっていうアイドルグループのセンターとやらをやっている。勿論、個人的にはそんなものには微塵も興味はない。背が低いってだけで、そんな女と似ているとか言われる俺に、ラブレターとかいい加減にしてくれ。男でも大丈夫だとか言ってみろ、剣道未経験者およそ千段のクロが黙っちゃいないぞ。

 息を整えて、俺は手紙を取ってみる。何の変哲もない普通の封筒。果たし状の文字も無いし、ハートマークのシールも貼ってない。俺はそっと開けてみた。

 放課後、校舎裏で待ってます。穴沢天。

 あなざわ、そら。俺の女友達で、穴沢って呼ばれるのが嫌っていうから、仕方なく天って呼んでいる。名前が被るのもあって相原が俺に、おっしいって名付けたんだ。少し変わり者だけれど、悪い奴じゃあない。あまり女性らしいかと言えば違うけれど、だからって果たし状を出すような者じゃない。

 まさか、ラブレターか。天がか、俺にか。

 考えてみると、相原辺りと違って、天ってボディタッチが多かった気がする。少し男勝りな所があるから、そういうものかって思ってた。でも考えてみれば、ああいうの他の女友達にもしてなかったからな。もしかして、天って俺の事。

 そこまで考えると、再び頭痛が襲ってきた。調子に乗るなよ、押立宇宙。って、神に警告されたような気分になった。とにかく今は放課後だし、天を待たせても悪い。俺は靴を履き替えると、小走りで校舎裏に向かった。