「おはよっ」
エレベーターを降りると、制服姿の天が待ち伏せていた。
「え? 誰だれ?」と梨花の奴が面白がって、詰め寄ってきた。俺は姉を押しのけて、天を学校方面へと引っ張って行った。
「やっぱり、アイドルだから、テレビで見るより可愛いんだね」
満面の花畑のような笑顔で、目の前の女の子が言った。梨花なんかより天のが数百倍は可愛いし、って思ったけれど。口に出せなかったのは、俺はそういうキャラじゃないからだ。
「それより、何だ。朝から、いきなり」
一緒に登校したかったんなら、前持って連絡を寄越してくれればいいのに。そう言おうとすると、何故か天は俺を物陰まで引っ張っていった。
家と何かの建物の間、一目の付かない場所。もしかして、と思った瞬間、天の唇が俺の唇に重なった。あっという間に、頭痛は綺麗さっぱり消え去った。
「あたま、痛いと思って」
俺から唇を離した天は、照れ臭そうにはにかんだ。頭痛は無くなったけれど、今度は別の意味で頭が痛くなりそうだった。