そんなわけでベッドに寝転がり、気を失っていた間に見たものを思い返す。

 夢だと思っていたあの出来事は、果たして本当に夢だったのだろうか。

 通常どおりの思考力を取り戻した今だったらわかるが、あれは夢なんかではない。実際の出来事であると確信している。

 状況もはっきりとしているし、色彩も明瞭だ。そのときの風景も音も感情も、鮮やかに思い出すことができる。

 ただ一つだけ、シロちゃんの顔を除いて。

 しかし、あれが現実に起きたことだとすると……。

 事実として知っているだけならまだわかる。しかし、私が生まれる前の出来事を、私が思い出した(●●●●●)というのはおかしい。まさか本当に、前世の記憶なのだろうか。

 生まれ変わりなんて、今までこれっぽっちも信じていなかった私には、すぐに受け入れることはできない。でも、鮮明な記憶があるのも事実で……。

 誰かから聞いた話を、私自身が経験したものとして混同してしまっているのではないかとも考えた。

 けどやはり、あの出来事は経験した記憶そのものとしか思えない。

 私はたしかに、十六年と八ヶ月前、月守風香としてこの世界に存在していた。

 常識的に考えれば、私は脳に問題があることになる。

 自分自身を信じれば、非現実的な現象が起こっていることになる。

 いずれにせよ大変なことだ。

 どうにかしなくては。

 でも、どうすればいいの?

 それに、シロちゃんの言っていたことも気になる。

 ――十五年と五ヶ月後。嶺明高校で、二人は再会するんだ。