「はると!あれ、おまえ絵なんか描くの?」

「いや、これは僕のじゃ、……って、あれ? うこちゃん?」

同級生の真也に声をかけられて、振り返るとうこちゃんが消えていた。

スケッチブックは残したままだ。

トイレかな?

「そういやさ、あそこのカフェ出るらしいぜ」

「で、出るって何が? 」

「死んだ女の子の幽霊」

「え?」

「あそこの店長の妹がさ、うちの高校の生徒だったらしいんだけど、先月亡くなったんだって。その子にそっくりな女の子が、雨の日に店に現れるって話。知らね? 今日あたり、何人かカフェに行ったらしいぞ」

あぁ、それであんなに混んでたのか。

真也はそれだけ言ってマンガコーナーに向かった。

それにしても、うこちゃん遅いなぁ。

30分ほど待っても帰ってこない。もしかしてトイレで倒れたのか?

僕は図書館の人に事情を説明して女子トイレを確認してもらったが、うこちゃんはいなかった。

何か急用ができて帰っちゃったのかな。

スケッチブックどうしよう。

僕はもう30分ほど待ってから、うこちゃんのスケッチブックと色鉛筆を持ってカフェに向かった。

いつのまにか雨は上がっていた。