Just a little while ago・・・
Side凪波
昔から、朝陽の家に行くのが嫌だった。
ニコニコと、年齢相応の可愛さをまとう朝陽のお母さん。
私のお母さんの親友だという人。
何故、こんな人が、あの人の親友になれたのだろうという程、おおらかで、少し抜けている人。
完璧を好むあの母が、1番嫌いであろう人種なはずなのに。
深夜の急な来訪にも関わらず、よりによっておもてなしにと、手間がかかるご自慢のアップルパイを本当に作り始めた。
真横で鼻歌を歌いながら、りんごの花まで作り始めている朝陽のお母さんを見ながら、私はとても複雑な気持ちになった。
「ねえ、凪波ちゃん?」
「何ですか?」
朝陽のお母さんは、周囲をチラチラ見ながらこう言う。
「これ、モニタリングの撮影かい?」
「モニタ……?」
また、知らない単語。
私は、そんなにもわかりやすい表情をしたのだろうか。
朝陽のお母さんはすぐに
「ドッキリとか……そういうテレビの番組」
と訂正してくれた。
「あっ、ああ……ドッキリですね」
それなら分かる。
でも、いきなりテレビの撮影かと聞いてくる理由は分からない。
と言うより、この人のことが、やっぱりよく分からない。
「だって、あんなイケメンさんが、うちの子と仲良しだなんて……天と地がひっくり返ったってないでしょ」
なるほど。そう言うことか。
先ほど、一緒にここに来た男性の事を意味しているのだろう。
一路朔夜という名前で活躍するという、人気声優。
声優の情報なら、男女関わらず声を聞いただけて当てるくらいの自信がある私が、全く知らない人。
そして、私が知らない私のことを知っている……と言う人。
「知らない所で、仲良くなったのかもしれませんよ」
自分の口から出てくる言葉が、自分に刺さる。
「ほら、うち色々な形でテレビに紹介されるようになったでしょう?あの子があんなイケメンさんと仲良くなるより、ドッキリに使われる方が、まだ確率が高いと思うのよね〜」
自分の息子のことながら、ひどい言い草だ。
この人の事を知らない人が、この発言を聞けば思うかもしれない。
でも、私は知っている。
この人は、決して息子の事を謙遜という日本語を盾にして、下げたりはしないことを。
Side凪波
昔から、朝陽の家に行くのが嫌だった。
ニコニコと、年齢相応の可愛さをまとう朝陽のお母さん。
私のお母さんの親友だという人。
何故、こんな人が、あの人の親友になれたのだろうという程、おおらかで、少し抜けている人。
完璧を好むあの母が、1番嫌いであろう人種なはずなのに。
深夜の急な来訪にも関わらず、よりによっておもてなしにと、手間がかかるご自慢のアップルパイを本当に作り始めた。
真横で鼻歌を歌いながら、りんごの花まで作り始めている朝陽のお母さんを見ながら、私はとても複雑な気持ちになった。
「ねえ、凪波ちゃん?」
「何ですか?」
朝陽のお母さんは、周囲をチラチラ見ながらこう言う。
「これ、モニタリングの撮影かい?」
「モニタ……?」
また、知らない単語。
私は、そんなにもわかりやすい表情をしたのだろうか。
朝陽のお母さんはすぐに
「ドッキリとか……そういうテレビの番組」
と訂正してくれた。
「あっ、ああ……ドッキリですね」
それなら分かる。
でも、いきなりテレビの撮影かと聞いてくる理由は分からない。
と言うより、この人のことが、やっぱりよく分からない。
「だって、あんなイケメンさんが、うちの子と仲良しだなんて……天と地がひっくり返ったってないでしょ」
なるほど。そう言うことか。
先ほど、一緒にここに来た男性の事を意味しているのだろう。
一路朔夜という名前で活躍するという、人気声優。
声優の情報なら、男女関わらず声を聞いただけて当てるくらいの自信がある私が、全く知らない人。
そして、私が知らない私のことを知っている……と言う人。
「知らない所で、仲良くなったのかもしれませんよ」
自分の口から出てくる言葉が、自分に刺さる。
「ほら、うち色々な形でテレビに紹介されるようになったでしょう?あの子があんなイケメンさんと仲良くなるより、ドッキリに使われる方が、まだ確率が高いと思うのよね〜」
自分の息子のことながら、ひどい言い草だ。
この人の事を知らない人が、この発言を聞けば思うかもしれない。
でも、私は知っている。
この人は、決して息子の事を謙遜という日本語を盾にして、下げたりはしないことを。