「ああ、じゃあ二条院に頼んでいいか? 先生も少し忙しくて……」
面倒な事をせずに済んだと喜んでいるのがバレバレですよ、そう思っても自分から言い出したことだし嫌な顔は出来ない。数人の男子が私をチラチラと見ながらコソコソと話している事も気付いてる。
「さすが実行委員、サボりまで面倒見てくれるんだな」
「ははは。凄い真面目そうな雰囲気だもんな、二条院さんって」
自分は何もしないくせに、そうやって人の事を面白そうに話せるのね? どうせ私は真面目しか取り柄の無い面白みのないお嬢様でしかない事も分かってる。
だけどこうして周りの声を聞こえないふりをして、ずっといい子に振舞う事が正しいのだと思い込んでいたの。
「はい、分かりました」
そう言って私が座るとすぐに授業が再開される、幡保君のことにはもう誰も触れない。入学したばかりでまだクラスに馴染んでいない生徒の事までは、気にしていられないのかもしれないけど。
説明がほとんどの授業は退屈で、ぼんやりと窓の外を眺めているとグラウンドの端を歩いている生徒の姿。あの派手な髪色は、間違いなく幡保君だ!
彼はどこへ向かっているのか、今ならあの場所まで走って追いつけるのに。もちろんそんな理由で授業を抜け出すような事出来る訳なくて……
幡保君の姿が見えなくなる様子を、授業が終わるまでただソワソワと見ている事しか出来なかった。