幡保(はたほ)君。今日の放課後、実行委員会だってちゃんと覚えてる?」

 四限目の授業を終えるとすぐに教室から出て行こうとする幡保君を見つけ、慌てて近寄り声をかけた。いくら自分から立候補したのだとしても、不良の彼が真面目に委員の仕事をしてくれる保証はない。
 
「分かってる、その時になったら戻ってくるから」

「ええと、それならいいの」

 幡保君は私とほとんど顔を合わせようともせず、そのまま教室から出て行ってしまった。背はそんなに高くないのに、声変わりした低い声が耳に残る。
 委員会にもちゃんと出てくれるつもりだったようだし、ちゃんと戻って来るって彼は言ってくれた。ホッとして机に戻り、隣の席になった女子と一緒に昼食を済ませた。

 五限目が始まって、なんとなく幡保君を探すけれど彼の姿は無い。机の上には鞄が置かれたままなので帰ってしまった訳ではないと思うけれど……

『その時になったら戻ってくるから』

 ……あの言葉って、もしかして委員会まで授業をサボるって意味だったの? 授業は出ないのに委員会には出る、それって無茶苦茶じゃな気がするのだけど。
 幡保君がいない事に気付いた教師が他の生徒に尋ねるけれど、誰も彼の事には興味がないように見えて……

「次の休み時間に私が幡保君を探してきます」

 気付いたら立ち上がり、そんな事を言ってしまっていた。