「片方に色恋の話が出れば、もう片方も我のように思い悩む。一心同体と言う訳か。」

「はい。例えて言うならば、そのようなものです。」

依楼葉は、生きている時の咲哉を、思い出した。


生まれてから、ずっと一緒だった。

立つ事も、歩く事も、話す事も、食べる事も。

武芸も和歌も、漢詩も。

何もかも、咲哉と一緒にやってきた。


だからこそ、咲哉が亡くなった時は、自分の半分を失ってしまったような気がした。

依楼葉自身、咲哉を演じる事で、その悲壮感を埋めているのかもしれない。


「ところで、なぜご両親殿は、そなた達を双子と知った上で、共に育てたのだろうな。」

「えっ?」

依楼葉は、難しい顔で橘文弘を見た。

「それは、どういう意味でしょうか。」

強く出た依楼葉に、叔父であり義父である藤原武徳が、止めるように手を差し出した。

「よいのです、右大臣殿。」

普通であれば、太政大臣で帝の叔父である、橘文弘に口応えするなど、あってはならない事。