「さあ、もう今日は休みましょう。」

「そうだね。」

すっかり心を許した依楼葉は、桃花の隣で寝てしまう。


草木も眠る丑三つ時。

寝入ってしまった依楼葉の胸元を、桃花はそっと捲った。

「やはり……」

いくら流行り病で、体を鍛えていないからと言っても、この胸のふくよかさは、女しかいない。

しかも夫・藤原咲哉には、依楼葉という世にも珍しい、双子の妹がいる。

しかもこの妹。

漢詩が好きで、武芸にも通じているという部分まで、夫に似ているのだ。


だが桃花は、そんな依楼葉が労しくて仕方がない。

男の成りをして、中納言の職を全うしようとする依楼葉。

初めての恋に、思い悩む依楼葉。

病気のせいで、抱けなくなったけれど、桃花には誠意を尽くすと言ってくれた依楼葉。

どれも桃花にとっては、見ていて痛々しい。


だが、この荒波を依楼葉一人で乗り越えるのは、至難の業だ。

「私が、あなたをお支えします。ねえ……我が背の君様……」

桃花は、依楼葉の胸にすがるのであった。