「やはり……双子なのですね。」

依楼葉は、ビクッと体が反応した。


「春の中納言殿とは、病から復帰した後、少しの間だけ一緒にお勤めをした事があります。とてもたおやかなお方であった。」

その時の春の中納言・藤原咲哉は、依楼葉が扮した者だったが、亡くなった者を思い出してくれる夏の右大将・橘厚弘に、依楼葉は胸が温かくなった。


「ここまで呼び寄せた事、許して下さい。妻から、春の中納言殿の妹君と一緒に、帝にお仕えしていると聞いて、一度会うてみたかったのです。」

「いえ。お気になさらないで下さい。兄君も、そのように仰っていただいて、嬉しく思っているはずです。」

依楼葉は、顔を見せないようにしながら、お礼の言葉を述べた。


「では、お願い致します。」

「はい。」

依楼葉は、夏の右大将から文書を受け取ると、それを持って自分の部屋に戻った。

「尚侍。主上のお食事が終わりました。」

「分かりました。」