屋敷に帰った後の父・照明はどことなく、気分が落ち込んでいた。

「旦那様、お勤めの最中、何かございましたか?」

見かねて、妻の東の方が心配する。

「うん……」

いつもは、何かあっても”何もない”と言う人なのに。

これはお家にとっても、何かあったのだなと、東の方は思った。


「……子供達はいるか?」

「はい、ただいま。」

東の方は直ぐに、依楼葉と隼也を呼んだ。

「お父上様、お呼びですか?」

二人揃って父に挨拶する姿は、客観的に見ても、美男美女。

才能溢れる若者に見える。

だからこそ、親として伝えなければならない事がある。


「二人共……こちらに。」

「はい。」

依楼葉と隼也は、父・照明の前に座った。


「まずは、依楼葉からなのだが。」

「はい、父上様。」

照明は、ちらっと依楼葉を見た。

「……今日、太政大臣殿に呼ばれてな。その……依楼葉の出仕を、再度頼まれた。」