そこで依楼葉は、目を疑った。

父の後ろに、帝がいるのだ。

慌てて、姿を隠す依楼葉。

しかも今、咲哉と言った!?


「咲哉、入るぞ。」

依楼葉は、御帳台に隠れ、髪を一つに結い上げた。

そして着物を脱ぎ、肩にかけた。

「はい、父上様。」

依楼葉は、咳ばらいをした。


「今日は、わざわざ帝が、足を運んで下さった。」

依楼葉は、公達の時のように頭を下げた。

「本日は……」

「ああ、よいよい。」

五条帝は、御帳台のすぐ前に座った。


これでは、こんな格好をしているのが、分かってしまわないか。

依楼葉の額に、汗が滲む。

髪を直す振りをして、額の汗を拭き、依楼葉は父の顔をチラッと見た。

父は、依楼葉に見られて、ドキッとしている。

「で、では……私はこれにて……」

肝心の父は、急に立ち上がり、慌てて部屋を出て行ってしまった。


残された依楼葉は、一人口をあんぐりと開けた。