「……あなた様に、似ておりますね。」

「ええっ?」

父はちらちらと、隼也を見た。


「そなた、母上は?」

母は、隼也に早速尋ねた。

「……亡くなりました。流行り病で。」

「まあ……」

どこの家も、流行り病で命を落とすのは、珍しくない。


「母に何かあれば、左大臣家を訪ねよと、母は常々申しておりました。その笛が、お前を守ってくれるからと。」

母は、父をじーっと眺める。

我慢できない父は、扇を出して仰ぎだす始末だ。


「でも、まあ、いいでしょう。よくぞ、現れてくれました。」

「えっ?」

依楼葉は、母の方を向いた。

父に隠し子がいて、怒ってはいないのだろうか。


「今や、流行り病で子供を亡くす親も、たくさんいると聞きます。この左大臣家も、どうなるかは分かりません。今は、一人でも多く子女がほしいところ。そなた、確か隼矢と申しましてね。」

「はい。」

「この左大臣家の子女に、なってくれますね。」