依楼葉が家に帰ると、家はバタバタと騒いでいた。

依楼葉は、使用人の佐島を見つけた。

「どうした?佐島。」

「ああ、姫様……」

佐島は辺りを見回すと、依楼葉に近づいた。


「あの姫様。驚かないで下さいね。」

「あ、ああ……」

佐島は、依楼葉の耳元で囁いた。

「実は……旦那様の子供って言う、若者が屋敷に現れたんです。」

「えっ!?」

依楼葉は、口を覆った。

「佐島、それは誰だって、驚くだろう。」

「まあ、そうですよね。今や屋敷中が、大騒ぎですよ。」

そう言って佐島も、庭の奥に消えて行った。


父の子供?

母は、知っているのだろうか。

知らないのであれば、隠し子?

厄介な事になったと、依楼葉は大広間へ向かった。


そこでは佐島をはじめ、使用人達がその若者の世話をしていた。

若者の前には、父が座っていた。

「父上様。」

依楼葉の登場に、使用人達が一斉にこちらを向く。