今度は意図的に口を噤んだ私の深意は、彼に見抜かれてしまっている気がした。


「そういうわけじゃないけど」
「今どきの若い子はマセてて困るなあ」
「……七つしか変わらないわ」
「七つも変わるんだよ」


私から言わせてみれば、数年早く生まれただけでこうも子供扱いをされてしまうのだから、それがどうにも不服で仕方がないのに。


七年早く生まれたから、私が未成年の間に貴方はいくつもの恋の終らせ方を学んで、そして愛する人と一緒になる幸せを知った。

七年遅く生まれた私は貴方が先ばかりを生きているせいで、苦しいばかりの恋心を知った。

そんな後先のない恋愛の終わらせ方を学ぶことが出来ないまま、貴方とこの二年間を過ごしている。


「でももう帰らないと。本当はもう少し一緒にいたいんだけど」


だったら一緒にいればいいのに。私と二人で、気の済むまでこの部屋にいればいい。別に無理に帰らなくても。

そんな言葉たちはいつもと変哲の無いまま、喉の奥底につっかえた。


伝えることが出来なかった。だって貴方が、義務を感じて帰ろうとしているわけではないことを知っていたから。

好んで帰るような家、用意された貴方と誰かの寝室。多分家具たちも、貴方の趣味の物ではなくて。何気なく掛けられる声に相槌を打ちながら、貴方は私の存在に罪悪感を抱く。