かくて花琉帝と蔵人少将の斎、ふたりが帝の嫁取りを賭けて争う前代未聞の勝負が宮中で行われることと相成った。

 斎が勝てば帝は左大臣の末姫を娶り、中宮とする。
 帝が勝てば斎は女に戻り、入内する。

 勝負は日給簡に名の記された殿上人、あるいは女官であれば自由に見物できるものとし、清涼殿の東庭に観覧のための桟敷を備えた大がかりな場がしつらえられることとなった。日取りは陰陽師の卜占により、十日後と定められた。

 勝負の内容はみっつ。ひとつは花琉帝の提案による和歌。もうひとつは斎の提案による剣。最後のひとつは頭弁・藤原真成の発案により、誰から見ても勝負が明らかな弓と決まった。

 これこそが、後に言われる「宮中妻問(つまど)ひ三番勝負」である。