第一話 勇者パーティー追放!?

 王都アルトラ。海に面した土地であり、貿易が盛ん。王宮近くの森には魔物が沢山いる。だからか、昔から魔法を生業とする者がたくさんいたため王宮騎士や魔導士団が討伐している。
 そしてこの王都には聖剣を持つ勇者や魔術師、盾使い、ビーストテイマー、聖魔導士――この者たちのことを皆《勇者パーティー》と読んでいる。


 ***


 主人公・ノアは、街にあるパン屋さんにやってきていた。ノアとパン屋の夫婦とは大の仲良し。

「おばちゃん、このパン10個ください」
「はいよ! いつもありがとうねぇ」

 ノアは金貨を店主に渡すとパンの入っている紙袋を受け取る。
 店から出ると走って屋敷に帰り、キッチンにパンを置きに行こうとした時にここの住人のレオに呼ばれる。

 パンの袋を持ったまま、レオに呼ばれた先にある部屋に入る。


「……ノア」
「おはよう、みんな揃ってどうしたの?」


 部屋の中には、社長椅子に偉そうに座るイオリ。その右横で腕を絡めているキキ。左には、ロイドとレオがいる。


「相変わらず呑気だな、ノア。お前にはこのパーティーを出て行ってもらう」


 ノアは一瞬イオリが言った意味がわからなかったが、一回冷静にに考えると頭にクビになったんだと思い至る。


「ぶっちゃけお前、お荷物なんだよ」

「はぁ……」


 イオリたちは大爆笑しながら、ノアに対して悪口を言っていく。ノアはそんなに嫌われていたんだと心の中でショックを受けるが、一度深呼吸する。


「分かった。俺のものは全部(・・)持って行ってもいい?」
「ふん、出て行ってくれるならな」


 鼻で笑う彼らに「ありがとう」と言い、いた部屋を出てた。自分の部屋に戻る途中ノアは呪文を解く。


「《魔力強化解除》」


 部屋の中の大切なものとパンの袋を《収納魔法》に入れて、手ぶらに見せかけて屋敷を出た。

 外に出たところで、《全結界解除》と唱えるとノアの魔力は屋敷から完全になくなった。



 屋敷から出たノアは、歩いてファミレスのような飲食店に入る。席に座ると紅茶とサンドイッチを注文。

 長期滞在ができる宿を探していたノア。店員に宿を紹介してもらう。

 飲食店店員に紹介してもらった宿に向かうと、そこの主人・ヨハンに歓迎を受ける。ノアに与えられたのは宿の2階の奥の部屋。そこにはベッドにキッチン、シャワーが備え付けられている。

 ベッドに倒れ込むとノアは眠くなってきて何もせずに寝てしまった。


 ――一方、ノアが出て行った後の勇者パーティーの屋敷では……。

 ノアがいなくなり瘴気(しょうき)が溢れ、魔法強化を解除されてしまったために何もできずにいた。

 魔力強化解除されてしまった彼らの中で一番影響を受けたのは勇者のイオリだった。

 勇者なら抜ける聖剣が抜けなくなり、聖剣そのものがイオリを拒絶していた。


【お主だけ(・・)では魔力が足らぬ――】


 魔力のないイオリには聖剣の声は聞こえず、苛立っていた。


「くそっ……!」