「よかった。元気そうで。なんか悪いことしちゃったなぁって、ずっと気になってて」

 悪いことって……先輩がわたしに告白したこと?

「あかりちゃんと、うまくいってないんだろ? テニス部の二年生から聞いたよ。池澤さんが、部活やめちゃったってことも。それって……おれのせいだよな」
「ち、ちがいます」

 先輩はなにも悪くない。
 自分の気持ちを正直にわたしに伝えてくれただけ。
 そのせいでわたしはあかりを怒らせてしまったけれど、先輩はなにも悪くない。

「わたしだったら、ぜんぜん大丈夫ですから」
「そうなら、いいんだけど……」

 困ったように頭を掻いた先輩は、苦笑いしながらわたしに言った。

「池澤さん、彼氏できたんだね」
「えっ」

 突然の言葉にあわてる。

「帰り、よく一緒に歩いてるから」

 幸野といるところ、先輩にまで見られてたんだ。
 恥ずかしくなってうつむいたわたしの耳に、先輩の声が聞こえた。