次の日もわたしは早起きして、学校へ行く支度をした。
 お母さんは今朝も、不思議そうに声をかけてくる。

「莉緒? ご飯いらないの?」
「いらない!」

 バタバタと駆け足で、家を飛びだす。
 お姉ちゃんはまだ寝ている時間だ。

 学校なんて、行きたくないって思っていたのに。
 明日なんて、来なければいいって思っていたのに。
 わたしはなぜか、こんなことをしている。
 しなくてもいいことを、している。

 小学校までの道を走り、フェンスに沿って進んで、誰も住んでいない団地の敷地に入る。
 今日もそこの階段の下で、幸野が座っていた。
 そしてわたしに気づくと、「ほんとに来た」とつぶやいて、おかしそうに笑った。