なんなの、このひと。
 たしかにわたしは第一小だったけど……こんなひと、わたしは知らない。
 それなのにこいつは、小学生のころから、わたしを知っていたっていうの?
 もしかしてそれで、昨日も声をかけてきたの?

 するとわたしの耳に、あかりの声が聞こえてきた。

「ああ、そういえば莉緒も第一小だっけ。あんたいたの、忘れてたよ」

 あかりの声に、まわりの女の子がくすくす笑う。
 わたしはうつむき、背中をまるめる。
 すると幸野が、この場をまとめるように言った。

「まぁとにかく、こっち来たのは七年ぶりなんで。いろいろ教えてください。よろしくお願いしまぁす!」

 教室からパチパチと拍手が起こる。

「じゃあ剣持と池澤。幸野くんに学校のことや町のこと、教えてやってくれ。頼んだぞ」
「はぁい」

 先生の声にあかりが答えた。だけどわたしは返事ができない。
 ただうつむいて、スカートの上で手を握る。

「よろしく、池澤さん」

 ハッと顔を上げると、幸野がわたしを見て、意味ありげに微笑んだ。