「転校早々女の子なんか連れて歩いて……ちゃんと学校に行ってるんだろうな?」
「行ってるよ」

 幸野がそっけなく答える。
 男のひとはふんっと鼻を鳴らして、家のなかに入っていった。

「あの……」

 わたしは幸野の背中に声をかける。
 すると振り返った幸野が、いつもの調子で軽く笑いかけた。

「これがうちの家族だよ。ていうか、同居人?」

 じっと、幸野の顔を見つめてつぶやく。

「さっきの話……ほんとうだったの?」

 幸野はそれに答えずに、わたしに向かって言う。

「ひとりで帰れる?」
「え、あ、うん」

 わたしはぼんやりと、街灯の灯りに照らされる、幸野の顔を見る。

「じゃあ、また明日。池澤莉緒さん」

 どうしてだろう。
 なんだかすごく、胸が痛い。