国道をしばらく歩いて右に曲がると、新しい家が建ち並ぶ住宅街に入った。
 幸野の家はこの先にあるんだという。
 手をつないだまま歩いていくと、綺麗な洋風の一軒家が見えた。

「あ、悟くん!」

 ガレージに停まった車から降りてきた、若い女のひとがそう呼んだ。

「おかえりなさい」

 女のひとは赤ちゃんを抱いてこっちを見ている。

「そっちもおかえりなさい。いま帰ってきたんですか?」

 幸野がわたしのとなりで言う。
 わたしはあわててつないでいた手をほどいた。
 女のひとはにっこり微笑むと、幸野に話しかけてくる。

「ええ、そうなの。ごめんなさいね、一週間もひとりにしちゃって」
「いえ、ぜんぜん」

 幸野は笑顔でそう答えてから、女のひとに抱かれている赤ちゃんに声をかけた。

陽翔(はると)ー、元気だったか? おばあちゃんち、楽しかったか?」

 赤ちゃんはきょとんとした顔で、幸野のことを見ている。
 わたしがなにも言えずに突っ立っていたら、女のひとがぺこっと頭を下げた。
 わたしもあわてて、おじぎをする。

「悟くん? お友だち?」
「あ、うん。同じクラスの子。おれちょっと具合が悪くて、この子が送ってくれたんだ」
「まぁ、ありがとうございます。よかったら、上がっていって?」

 わたしはさらにあわてて、首を横に振る。

「い、いえ、けっこうです。わたしはこれで……」
「そう? じゃあまた遊びにきてくださいね」
「は、はい。お大事に」

 優しそうなひとだ。
 女のひとは赤ちゃんを抱いたまま、家のなかへ入っていく。
 それと入れ替えに、車からキャリーバッグを運んできた男のひとが、幸野に言った。