翌朝はいつもよりずっと早く家を出た。
 紙袋に入れた、幸野のブレザーを抱えて。

 あいつはいつもわたしより早く学校に行く。
 教室に入るとすでに幸野は学校に来ている。
 いったい何時に家を出ているんだろう。
 でも今日はわたしも早く出てきたから、歩道橋の上で待っていれば会えるはず。

 朝のこの時間、通勤や通学のひとたちが、わたしの後ろを通り過ぎる。
 わたしは手すりに手をのせて、歩道を見下ろす。
 学校に行く前にこれを渡してしまいたい。
 教室で声をかけたら、あかりたちにまたなにか言われそうだし、それにお礼も……言いたいし。

 だけどいくら待っても、幸野はやってこなかった。
 時計を見ると、いつもわたしが学校に行く時間だ。
 これ以上待っていたら、遅刻してしまう。
 わたしは紙袋を胸に抱えたまま、駅に向かって走った。