ぽつんっと雨のしずくが落ちてきた。
 ああ、そうだ。
 今日雨が降るって、お母さんに言われていたのに……傘忘れちゃった。
 わたしってほんとうに、学校でも家でもだめな子だ。

 ぽろっとわたしの目からも、涙が落ちる。
 変だ。わたし。昨日から、すごく変。
 これもぜんぶあいつのせい。

 手すりに頭を押しつけた。
 降りだした雨が、わたしの髪を肩を背中を濡らしていく。

 もういい。なにもかもがどうでもいい。
 わたしなんか、雨と一緒に地面に落ちて、消えちゃえばいいんだ。
 そのときふと、昨日聞いた声が聞こえてきた。

『この先、楽しいことがたくさん起きるよ』

 幸野がわたしに言った言葉だ。

『池澤さんにも……たぶん、おれにも』

 いつも自信満々の幸野が、最後のところだけ自信なさそうな声で言った。
 幸野には、楽しいことが起きないって、思っているの?