【悟に言いつけたら殺すからね】

 わたしはパタンっとノートを閉じた。
 深く深く息を吐く。
 指先から手のひらに震えが広がる。

 背中につめたい視線を感じた。
 あかりかもしれない。優奈かもしれない。
 わたしは息をひそめて、背中をまるめる。

『つきあわない? おれたち』

 昨日聞いた、幸野の言葉が頭に浮かんだ。

 バカだ。わたしは。
 うそつきなあいつの言葉を信じたりして。
 からかわれてることにも気づかないで。

【調子に乗るな】

 そうだ。わたしはたしかに浮かれていた。
 また、一年前と同じ過ちを犯しそうになっていた。

 チャイムが鳴る。先生が教室に入ってくる。
 わたしは英語のノートを、バッグのなかに押し込む。

『おれが……池澤さんを、守ってあげるから』

 あの言葉も……きっとうそに決まってる。