十分ほど歩いてわたしたちが着いたのは、第一小学校だった。

「え、学校?」
「そう。なつかしいなぁ」

 幸野は目を細めて校舎を見上げると、開いていた通用門から勝手になかに入っていく。

「ちょっ、駄目だよ! 勝手に入ったら……不審者だと思われちゃう!」
「大丈夫だって。開いてるんだし。それにおれたち不審者じゃなくて、この学校の出身者だろ?」

 はははっと笑ったあと、「おれは途中までだけど」と付け加える。
 わたしは幸野に手を引かれたまま、おそるおそる学校の敷地に入る。
 門を入るとすぐに、飼育小屋が見えた。

「あ、あの小屋!」

 なつかしい記憶がよみがえる。
 放課後、あそこで掃除をしたあと、ウサギに餌をあげて帰ったんだ。
 たしかにひとりでやるのは大変だったけど、動物は好きだから、そんなに嫌ではなかった。

「たしかウサギがいたんだっけ?」
「うん。ウサギ。真っ白の」

 いつの間にかわたしは飼育小屋に駆け寄っていた。
 けれどそこには……

「なにもいない……」

 なかは空っぽで、動物を飼育している気配はなかった。

「もう飼ってないんだ……」

 ぽつりとつぶやく。

 あのウサギはどうなったんだろう。
 わたしが四年生のころ、すでに高齢だったから……