遠足のとき、クラスのみんなで行った高い展望台に、ふたりでのぼった。
 すこし強い風を受けながら、制服姿のわたしたちは、並んで海をながめる。

 青くて広い海は、あのころとなんにも変わっていないけど、わたしたちは変わってしまった。
 もうあのころに、戻ることはできない。

 ちらっととなりを見ると、幸野が黙って海を見ていた。
 またすこし寂しくなって、わたしは幸野の手を握る。

 幸野はわたしに視線を動かし、ちいさく笑うと、わたしの手を強く握り返した。