「あの……あの、わたしも……」

 勇気を出して、声を振り絞る。
 一番大事なことをいま、わたしは幸野に伝えたいと思ったから。

「わたしも……好きだから……幸野のこと」

 幸野はじっとわたしを見て、それから泣きそうな顔で笑う。
 そしてわたしに向かって、こう言った。

「知ってるよ。そんなこと」

 海風に吹かれながら、わたしたちは見つめあう。
 わたしの目からじわっと涙があふれて、幸野はごまかすように、おにぎりとサンドイッチを頬張った。

「池澤さんも、食べなよ。おいしいよ」
「うん。食べる」

 わたしは幸野の前で微笑んで、サンドイッチを口に入れた。
 黄色い卵のサンドイッチは、すこししょっぱい味がした。