「えっと……こっちがおにぎりで、こっちがサンドイッチ。おにぎりの中身は鮭とおかかと梅干し。サンドイッチはハムと卵とツナだから」

 わたしたちはお互いの目が真っ赤になるまで泣いて、ぎこちなく体を離して、なんとなく気まずいまま、レジャーシートの上にお弁当を広げた。

 わたしの説明を聞いている幸野は、さっきからずっと唖然とした顔をしている。
 え、やっぱりおかしかったかな。
 引いてる? わたしのこと。

「あのさぁ……」
「な、なに?」

 レジャーシートの上で正座をして幸野を見る。

「これぜんぶ、ひとりで作ったの?」
「うん、そうだよ」
「ふたり分だよな?」
「うん」
「ちょっと……多すぎないか?」
「え、だって……幸野がおにぎりとサンドイッチ、どっちが好きかわからなかったし。中身もなにがいいのかわからないから……」

 つまりわたしは、幸野のことをなんにも知らないんだ。
 顔を上げると、幸野がじっとわたしを見ていた。
 わたしはあわてて口を開く。

「こ、幸野は、おにぎりとサンドイッチ、どっちが好き?」
「どっちも」
「え……」
「池澤さんが作ってくれたものなら、どっちも」

 今度はわたしがぽかんっと口を開けたら、幸野がおかしそうに笑った。
 そして鮭のおにぎりとハムのサンドイッチを両手に持つと、「いただきます!」と言って、勢いよく食べはじめる。

「うん、うまい。おにぎりもサンドイッチも」

 その様子を見ていたら、なんだか体の力がふわっと抜けた。