「莉緒……早いな。もう起きてたのか?」
「あ、おはよう。お父さん」

 翌朝、わたしはまだ暗いうちに起きて、お弁当を作った。
 お姉ちゃんを送っていったお母さんは、おばあちゃんちに泊まっているからいない。
 起きてきたお父さんは、わたしの作ったものを見て、不思議そうな顔で聞く。

「学校の弁当か? やけに量が多くないか?」
「いいの。これで」

 ついでにお父さんの朝食も用意してあげて、いつもより早く家を出る。

「いってきます。お父さん」
「ああ、気をつけてな」

 わたしは駅のほうへは行かず、まだ小学生の登校していない通学路を歩き、学校のフェンスに沿って進む。

 久々にやってきた団地のあった場所は、建物がすっかり取り壊され、更地になっていた。
 立ち入り禁止のロープのそばには、看板が立っていて、ここにマンションが建設されると書かれてある。

 わたしはその場に立ちつくし、朝の陽ざしに照らされている地面を見ながら、寒かった季節を思い出す。