学校から駅まで歩き、電車に乗る。
 三つ目の駅で降り、また歩く。
 同じ中学校から西城高校に進学した子はほとんどいない。
 仲が良かったのは、あかりくらいだ。

 うちの学校は偏差値が低く、このあたりでは底辺高校なんてバカにされている。
 それでもわたしは、あかりがいたから、入学してよかったって思っていた。

 電車のなかでも、歩いているときも、幸野は話しかけてこなかった。
 だけどずっとそばにいて、わたしから離れようとしない。

 家の近くの歩道橋の上で立ち止まる。
 昨日、幸野と出会った場所だ。
 わたしは昨日のことを思い出す。

「ね、ねぇ……」
「ん?」

 ひとりごとのようなわたしの声に、幸野は反応してくれる。

「昨日ここで声をかけたとき……わたしだと気づいてたの?」

 すると幸野が、少し口元をゆるめて答える。

「いや、最初はわかんなかった。でも顔見たら見覚えがあったから、もしかしてって思って。なのに名前教えてくれないだろ? 一か八かで賭けてみたら、めっちゃ顔色変わったからさ。あ、やっぱり池澤さんだってわかって。そしたら同じクラスにいるんだもんな。あれはおれも驚いた」

 ははっと笑って幸野がわたしを見た。
 歩道橋の真ん中で、わたしたちの目が合う。

 変なひと。だからって、なんでこんなわたしに関わってくるの?
 あかりに言われたでしょ? わたしのことはほっとけって。