みんなでおしゃべりしながら、渡り廊下を渡る。
そのときわたしは、スマホをいじりながら前から歩いてくる、生徒の姿に気がついた。
細身で背が高くて、短めの黒い髪の男子生徒。
わたしがいることに、気づいているのかいないのか、スマホに目を落としたまますれ違う。
わたしの心臓が、波のように揺れた。
「ねぇ、いまの幸野くんじゃない?」
ひとりの女の子がみんなにささやく。
「なんか雰囲気変わったね」
「うん。落ち着いたっていうか……」
「教室でも、おとなしいらしいしね」
女の子たちが、去っていく幸野の後ろ姿をちらちら気にしながら話す。
わたしは黙ってそれを聞いている。
あの騒ぎのあと、幸野は学校に来なくなって、そのまま三年生に進級した。
新学期がはじまり、たまたまのぞいたとなりの教室で、幸野が座っているのを見かけた。
明るかった髪は黒く変わっていて、誰ともしゃべらずに、幸野はひとりでぼんやり座っていた。
そのあとも、ときどき廊下で見かける幸野は、今日みたいにひとりでいることが多い。
わたしはそんな幸野と話すことも、一緒に帰ることも、毎朝会うこともない。
そのときわたしは、スマホをいじりながら前から歩いてくる、生徒の姿に気がついた。
細身で背が高くて、短めの黒い髪の男子生徒。
わたしがいることに、気づいているのかいないのか、スマホに目を落としたまますれ違う。
わたしの心臓が、波のように揺れた。
「ねぇ、いまの幸野くんじゃない?」
ひとりの女の子がみんなにささやく。
「なんか雰囲気変わったね」
「うん。落ち着いたっていうか……」
「教室でも、おとなしいらしいしね」
女の子たちが、去っていく幸野の後ろ姿をちらちら気にしながら話す。
わたしは黙ってそれを聞いている。
あの騒ぎのあと、幸野は学校に来なくなって、そのまま三年生に進級した。
新学期がはじまり、たまたまのぞいたとなりの教室で、幸野が座っているのを見かけた。
明るかった髪は黒く変わっていて、誰ともしゃべらずに、幸野はひとりでぼんやり座っていた。
そのあとも、ときどき廊下で見かける幸野は、今日みたいにひとりでいることが多い。
わたしはそんな幸野と話すことも、一緒に帰ることも、毎朝会うこともない。