「莉緒ー、行くよー、美術室ー」
「ちょっと待ってぇ」
「スケッチブック持ってきなよー。あんたすぐ忘れるんだからー」
「わかってるー」
バタバタ準備をして、わたしを待ってくれている女の子たちのもとへ走る。
そしてみんなで笑いあいながら、廊下を歩く。
なにげなく窓の外を見たら、残りわずかな桜の花びらが、はらはらと舞い落ちていた。
春。わたしは高校三年生になった。
去年の苦しかった一年がうそだったかと思うほど、わたしはいま、春風のようにおだやかな高校生活を送っている。
「ねぇ、菜摘ってさ、二組の緒方くんとつきあってるらしいよ?」
「うそっ、緒方くんって、あのバスケ部のイケメン?」
「知ってる! あたしもあのふたりが一緒にいるとこ、見たことある!」
「しかも緒方くんから告ってきたんだって?」
「うわー、マジで? あたしひそかに緒方くん狙ってたのにー」
わたしたちの話題はくるくる変わる。
好きな男の子のこと。イケメンアイドルのこと。新しくできたお店のこと。おいしいスイーツのこと……
別のクラスになったあかりの話題は、もうまったく出てこない。
わたしに対するいじめが先生たちに発覚したあと、厳重注意をされたあかりは、しばらくおとなしかった。
そのうち春休みになり、三年生に進級すると、あかりはまた新しいクラスのなかで、一番目立つ位置を確保したようだ。
たまに廊下で、あかりがわたしの知らない派手な女の子たちと、一緒に笑っているところを見かけることはある。
だけどいま、あかりが誰と仲がいいのかとか、誰のことが好きなのかとか、そんなのはまったく知らない。
きっとわたしとあかりが関わることは、もう二度とないだろうと思う。
「ちょっと待ってぇ」
「スケッチブック持ってきなよー。あんたすぐ忘れるんだからー」
「わかってるー」
バタバタ準備をして、わたしを待ってくれている女の子たちのもとへ走る。
そしてみんなで笑いあいながら、廊下を歩く。
なにげなく窓の外を見たら、残りわずかな桜の花びらが、はらはらと舞い落ちていた。
春。わたしは高校三年生になった。
去年の苦しかった一年がうそだったかと思うほど、わたしはいま、春風のようにおだやかな高校生活を送っている。
「ねぇ、菜摘ってさ、二組の緒方くんとつきあってるらしいよ?」
「うそっ、緒方くんって、あのバスケ部のイケメン?」
「知ってる! あたしもあのふたりが一緒にいるとこ、見たことある!」
「しかも緒方くんから告ってきたんだって?」
「うわー、マジで? あたしひそかに緒方くん狙ってたのにー」
わたしたちの話題はくるくる変わる。
好きな男の子のこと。イケメンアイドルのこと。新しくできたお店のこと。おいしいスイーツのこと……
別のクラスになったあかりの話題は、もうまったく出てこない。
わたしに対するいじめが先生たちに発覚したあと、厳重注意をされたあかりは、しばらくおとなしかった。
そのうち春休みになり、三年生に進級すると、あかりはまた新しいクラスのなかで、一番目立つ位置を確保したようだ。
たまに廊下で、あかりがわたしの知らない派手な女の子たちと、一緒に笑っているところを見かけることはある。
だけどいま、あかりが誰と仲がいいのかとか、誰のことが好きなのかとか、そんなのはまったく知らない。
きっとわたしとあかりが関わることは、もう二度とないだろうと思う。