校門を抜け、駅に向かって走る。
 電車に飛び乗り、駅で降りてまた走る。
 走りながら考えた。たくさん考えた。

 幸野のお兄さんに、ひどいことをしたお姉ちゃん。
 わたしとお姉ちゃんに、仕返しをした幸野。

 憎しみはどこかで断ち切らないと、永遠に続いてしまう。
 そうなったらもう、わたしにも幸野にも、明るい明日なんか永遠に来ない。
 そんなのは、いや。わたしはいやなんだ。

「幸野っ!」

 息を切らしながら、歩道橋の階段を駆け上がる。
 歩道橋の真ん中に、ぼんやりと立っている人影が見える。
 絡まりそうになる足を必死に動かし、わたしは後ろから、そのひとの服を引っ張った。

 幸野の制服は、ひんやりとつめたい。
 わたしが息を切らしていると、ゆっくりと振り返った幸野が口を開いた。

「なに……してんだよ」

 わたしは制服の裾をつかんだまま答える。

「幸野が……消えないように……」

 じっとわたしを見下ろしたあと、幸野があきれた表情で言う。

「おれみたいないじめっ子とは関わるなって、先生に言われなかったのか?」

 わたしはぎゅっと、服をつかんだ手に力を込める。