「四年生のとき、飼育係やってたよな? みんなが帰ったあと、ウサギ小屋の掃除してた。ほかのやつらはサボってるのに、毎日ひとりで黙々と。サボってるやつらに文句言えばいいのにって、ずっとおれ、思ってた」

 わたしはハッと口をおさえる。
 たしかに飼育係をやっていた。もうすっかり忘れていたけど。

「あのころは、あかりんとも仲良かっただろ?」

 胸がずきっと痛む。
 あかりとは去年まで仲が良かった。
 高校に入学したとき、あかりがテニス部に誘ってくれた。
 へたくそなわたしは、いつもあかりに教えてもらっていた。

 あかりはわたしのお姉ちゃんと同じように、明るくて、友だちがたくさんいて……わたしの憧れだった。
 だからわたしは、いつもあかりのあとを追いかけて。
 あかりはそんなわたしと仲良くしてくれて。
 あのころは、まさかこんな関係になるとは、思ってもみなかった。

 校舎から出てきた生徒たちが、ちらちらとこっちをうかがいながら、追い越していく。
 わたしがうつむいたら、幸野が言った。

「帰ろうよ、池澤さん。一緒に」

 その声には答えずに、わたしはうつむいたまま歩きだした。