ぼんやりとした頭で更衣室まで戻る。
なかにはもう誰もいない。
着替えようと思ってロッカーを見ると、わたしの白いワイシャツがなくなっていた。
わたしと幸野の写真が出回ったあと、嫌がらせはおさまっていたんだけど……またか。
ちいさく息を吐いたとき、更衣室のドアが開き、クラスの女の子たちが顔を出した。
「池澤さん」
名前を呼ばれ顔を向ける。
ひとりの女の子がシャツをわたしに差しだす。
「これ……池澤さんのでしょ?」
「え……」
ゆっくりと近づいて、手を伸ばした。
だけど女の子は困ったようにうつむく。
「でもね……」
受け取ったシャツを見る。
白い生地に、赤い血のようなものがついている。
ケチャップだ。
あかりの笑い声が頭のなかにぐるぐる響く。
「さっきあかりちゃんが、ロッカーから取りだしたのを見たの。バッグからケチャップを出して、優奈ちゃんにシャツを汚すように命令してた。そのあと廊下のゴミ箱に捨てたのを見て、わたしたち……」
女の子たちが気まずそうに顔を見合わせる。
「ごめんね。止めてあげられなくて。でも最近のあかりちゃんや幸野くんがやってること、ひどすぎるよ」
わたしは赤く染まったワイシャツを見下ろしながら、口を開く。
「拾ってくれたんだね、ありがとう」
「それ、洗いにいこう」
「落ちるといいんだけど……」
声をかけられ、胸がじんわりとあたたかくなる。
だけどわたしは首を横に振る。
「ううん、大丈夫。今日はこのままジャージでいる」
ぎこちない笑顔で笑いかける。
すると女の子たちもやっぱりぎこちなく笑ってくれた。
「じゃあ一緒に教室戻ろう」
その言葉にうなずいて、わたしは急いで支度をした。
なかにはもう誰もいない。
着替えようと思ってロッカーを見ると、わたしの白いワイシャツがなくなっていた。
わたしと幸野の写真が出回ったあと、嫌がらせはおさまっていたんだけど……またか。
ちいさく息を吐いたとき、更衣室のドアが開き、クラスの女の子たちが顔を出した。
「池澤さん」
名前を呼ばれ顔を向ける。
ひとりの女の子がシャツをわたしに差しだす。
「これ……池澤さんのでしょ?」
「え……」
ゆっくりと近づいて、手を伸ばした。
だけど女の子は困ったようにうつむく。
「でもね……」
受け取ったシャツを見る。
白い生地に、赤い血のようなものがついている。
ケチャップだ。
あかりの笑い声が頭のなかにぐるぐる響く。
「さっきあかりちゃんが、ロッカーから取りだしたのを見たの。バッグからケチャップを出して、優奈ちゃんにシャツを汚すように命令してた。そのあと廊下のゴミ箱に捨てたのを見て、わたしたち……」
女の子たちが気まずそうに顔を見合わせる。
「ごめんね。止めてあげられなくて。でも最近のあかりちゃんや幸野くんがやってること、ひどすぎるよ」
わたしは赤く染まったワイシャツを見下ろしながら、口を開く。
「拾ってくれたんだね、ありがとう」
「それ、洗いにいこう」
「落ちるといいんだけど……」
声をかけられ、胸がじんわりとあたたかくなる。
だけどわたしは首を横に振る。
「ううん、大丈夫。今日はこのままジャージでいる」
ぎこちない笑顔で笑いかける。
すると女の子たちもやっぱりぎこちなく笑ってくれた。
「じゃあ一緒に教室戻ろう」
その言葉にうなずいて、わたしは急いで支度をした。