その日の授業が終わると、幸野はあかりたちと連れ立って、騒がしく教室を出ていった。
 わたしはちいさくため息をつき、荷物をまとめて校舎を出る。

 駅までの道をひとりで歩き、ひとりで電車に乗って、ひとりで降りた。
 幸野がいない帰り道は、なにかが足りない。

 歩道橋の真ん中で立ち止まり、手すりに手をかけ、行き交う車をながめる。
 なにしてるんだろう、わたし。
 あんなことをされたのに、まだわたしはここで幸野を待っている。

『仕返ししたあとに、自分で断ち切ればいい』

 幸野はしたかったことを終わらせたら、自分で自分を終わらせようとしている。
 それが幸野の望みだから。
 でもそんなことはわたしがさせない。させてあげない。

 手すりをぎゅっとつかんで、遠くをにらむ。
 つめたい風がびゅっと吹き、わたしの髪とスカートを揺らす。
 こんな自分は、やっぱりどうしようもないバカだ。