翌朝、お姉ちゃんは部屋から出てこなかった。
 お父さんは会社を休んで、お母さんは黙りこんでいた。

「……いってきます」

 つぶやいて、お通夜みたいに静まり返った家を出る。
 昨日降った雪はもう解けて、地面がぐしゃぐしゃに汚れていた。

 いつも会う場所に、幸野が来るはずはない。
 わたしはぬかるんだ道をひとりで歩き、駅に向かった。