その日、お父さんが早めに会社から帰ってくると、お父さん、お母さん、わたしの三人で、お姉ちゃんの話を聞いた。
 お姉ちゃんはわたしたちの前で、ぽつぽつと昔の話をはじめた。

 小学生のころから、気に入らない子をいじめていたこと。
 中学生になると、それがエスカレートしていったこと。
 自分は手を出さないで、他の子たちにやらせていたこと。
 幸野匠という子を、いじめていたこと。
 その子が団地から、飛び降り自殺したこと。
 だけど先生にも家族にも、ばれなかったこと。
 それがずっと、苦しかったこと。
 お酒を飲んで、気持ちをまぎらわせていたこと。
 それでも苦しくて、ずっと死にたかったこと。

 途中で何度か吐きながら、お姉ちゃんは胸の奥にため込んでいたことを、ぜんぶ話した。
 お父さんは信じられないといった顔をしていて、お母さんはただおろおろしていた。
 わたしはずっと、幸野のことを考えていた。