「でももう、ぜんぶ終わったから」
ぼんやりと前を向いた幸野の視線は、どこを見ているのかわからない。
「もう……終わりだよ」
幸野がゆっくりと腰を上げる。
そして通学バッグを肩にかけ、枯葉を踏みつけ歩きだす。
曇った空から、白いものがはらはらと落ちてくるのが見えた。
「ど、どこ行くのよ!」
ふっと息をはくように笑った幸野が、わたしに振り返る。
「家に帰るだけだよ」
「わ、わたしもついていく」
「なんで? 大丈夫だよ。歩道橋から飛び降りて、死んだりしないから」
幸野はおかしそうに笑って、空を見上げる。
「ほら、雪降ってきたし。あんたもさっさと帰りな」
降りはじめた白い雪が、幸野の肩に落ちてすぐに溶ける。
「じゃあまた明日。池澤莉緒さん」
幸野がわたしの目を見て、いつもみたいにそう言った。
立ち上がったわたしは、雪のなかに消えていく幸野の背中を、見つめることしかできなかった。
ぼんやりと前を向いた幸野の視線は、どこを見ているのかわからない。
「もう……終わりだよ」
幸野がゆっくりと腰を上げる。
そして通学バッグを肩にかけ、枯葉を踏みつけ歩きだす。
曇った空から、白いものがはらはらと落ちてくるのが見えた。
「ど、どこ行くのよ!」
ふっと息をはくように笑った幸野が、わたしに振り返る。
「家に帰るだけだよ」
「わ、わたしもついていく」
「なんで? 大丈夫だよ。歩道橋から飛び降りて、死んだりしないから」
幸野はおかしそうに笑って、空を見上げる。
「ほら、雪降ってきたし。あんたもさっさと帰りな」
降りはじめた白い雪が、幸野の肩に落ちてすぐに溶ける。
「じゃあまた明日。池澤莉緒さん」
幸野がわたしの目を見て、いつもみたいにそう言った。
立ち上がったわたしは、雪のなかに消えていく幸野の背中を、見つめることしかできなかった。