空は朝より曇っていた。
 いまにも雨が降ってきそうだ。

 国道に出て、歩道をまっすぐ進む。
 一度だけ行った幸野の家は覚えている。
 インターフォンを鳴らすと、なかから幸野のお父さんの奥さんが出てきた。

「あら、あなたはこの前の……」

 奥さんはわたしの前でそう言ったあと、首をかしげる。
 いまはまだ授業中だ。
 こんな時間に制服でうろうろしている生徒なんていない。
 きっとわたしのことを、不審に思っているんだろう。

「あの……悟くんは……」
「いつもどおり、学校に行きましたけど……」

 家にはいないんだ。
 さっき幸野は通学バッグを持っていたから、家に帰ったのかもと思ったんだけど……
 わたしは両手をぎゅっと握りしめる。

「学校に行ってないのかしら?」
「い、いえっ、そういうわけでは……すみません。失礼します!」

 うまい言い訳もできず、ぺこっと頭を下げて背中を向けたわたしに、奥さんがつぶやく。