「ああ、莉緒はグループに入ってないから、見てないんだよね。いま莉緒にも送ってあげるね」

 あかりがスマホを操作して、ピコンっと送信音を鳴らす。

「ほら、莉緒のスマホに送ったよ」

 なにを?
 震える手で自分のスマホを取り出す。

 もうずっとやり取りしていなかったあかりのアカウント。
 何度も消してしまおうとしたのに、消せなかった。
 いつかまた、あかりとやり取りできる日が戻ってくるんじゃないかって、心のどこかで思っていたのかもしれない。
 そのアカウントから、メッセージが届いている。

 おそるおそる画面を開くと、寄り添うようにして写っている、男女の画像が現れた。

「ひっ……」

 思わず口元を押さえる。
 それは昨日海辺のレストランで撮影した、幸野とわたしの写真だった。

「なん……で……」
「よかったねぇ、莉緒。悟とデートできて」

 スマホを持つ手が震える。
 この写真を、クラス中のみんなが見たっていうの?
 胸の奥から、怒りや悲しみや恥ずかしさが、ぐちゃぐちゃになって沸き上がってくる。

「あともう一枚、あるんだけどー」

 あかりが意地悪く、口元をゆがませる。

「えー、あれ、ヤバいよ」
「なんでー、いいじゃん」

 あかりの指が、スマホの上をしなやかに動く。

「莉緒に送ってあげるね、っと」

 ピコンっという音とともに、わたしのスマホに画像が届く。
 それを開いた瞬間、わたしは手のひらから、スマホを落としそうになった。
 だってそれは……わたしたちがキスをしている写真だったから。