その夜はいろんなことを考えて、また眠れなかった。
 お姉ちゃんとはあれからひと言もしゃべっていないし、顔も見ていない。

『あんなやつとつきあうのやめな!』

 お姉ちゃんはどうしてあんなことを言ったんだろう。
 指先でなんとなくくちびるをなぞり、海でしたことを思い出す。

『また一緒にどこか行かない?』

 幸野はそう言ってくれた。
 わたしはまた幸野に会いたい。
 でも……お姉ちゃんと会ったときの、幸野の様子。
 具合が悪くなってしまったお姉ちゃん。
 おかしい。ぜったい、なにかがおかしい。

「莉緒! 早く食べちゃいなさい! 遅刻するよ!」

 わたしはハッと時計を見る。
 ヤバい。遅くなっちゃった。

「ごちそうさま!」

 朝食を食べかけのまま立ち上がる。

「いってきます!」
「まったく、朝からぼうっとしてるんだから」

 お母さんのぼやきを聞きながら、外へ飛び出す。
 お姉ちゃんは今朝、自分の部屋から出てこなかった。