体が震えている。期待と不安と興奮と寒さで。

「ど、どうしよう」

 何をどうしたら良いのか分からない。

 ゲームみたいに何か指示があるわけじゃないのだ。

「どうしよう!」

 と、とにかく、この寒さを何とかしなくちゃいけない。

 現在のボクは半袖なのだ。

 サクッサクと雪が積もる地面を踏みしめながら、再び外の門まで歩いて出る。

 時刻は……

 空を見上げてみるが分厚い雲が空を覆っていて分からない。

 それでも、夜であることは分かる。

 とりあえず目の前に、窓から光が漏れる、お店のような建物があるので、そこまで歩く。

 人通りはまばらだ。

 窓から中を覗くと商品が並んでいる。

 お店っぽい。雑貨屋だろうか?

 とりあえず中へと入ってみた。

 すると室内は暖かくて、それに食べ物のいい匂いがする。

 少しの緊張。同時に安心感もある。不思議な店だ。

「すみません」

 何度か声をかけると、中から全身を黒のローブや衣服でまとめた、とんがりボウシの老女が出てきた。長い杖も持っている。

「魔女?」

 ボクが思わず口にする。すると老女が話しかけてきた。

 しかし異国の知らない言葉のように聞こえる。たぶん英語ですら無い。塾で簡単にだが英語は習っているけど、それに類する単語が出てこなかったのだ。

「言葉が、通じない……」

 絶望。帰り方も分からない。言葉も分からない。どうすれば……

 ボクはいちおう首を左右に振って答える。

「ご、ごめんなさい。言葉が分かりません」

 涙があふれてくる。普通のラノベなんかだと言葉が通じているのに、何で……

 そんなボクを、じっと見下ろす老女が突然。ヒッヒッヒッと笑い始めた。それが怖くて一歩、後退《あとじさ》る。涙がこぼれ落ちた。

「帰りたい。帰りたいよ。お父さん。お母さん……」

 すると老女は顔をしかめたあとで、何やら呪文のようなものを唱え始めたのだ。すると杖が光り輝いた。

 ボクがその光景に呆然としていると、魔女が先端の光る杖でボクの頭をゴツンと叩いた。

「いっつ!」

 涙が引っ込む。

「何するんですか!」

 抗議の声を上げる。すると老女はまた、ヒッヒッヒと笑い、そして言った。

「どうだい? これで言葉は分かるかい?」

 唖然とするボクに老女がニヤリと笑った。

「お腹は空いていないかい?」

 ボクは頷く。

 確かにお腹は空いている。

 だが、まず確認して置かなければいけいことがある。

「ボクを食べたりしない?」

 すると老女。

 かっかっかと大きな口を開けて大笑いした。

「他に食べる物があるのに何でわざわざ、お前さんを食べなきゃならないんだい」

 そう言って老女が再びニヤリと笑う。

「他に行くあても、これからどうして良いかも分からないだろう? 付いておいで。なぁに。悪いようにはしないさ」

 そう言って、お店の奥の闇へと消えていったのだった。