今日は変なことを考えてしまったせいか、何だか頭がフラフラする。季節の変わり目だからか·····、頭痛もする。
はあ·····と吐息を出し、スーパーへ寄るため足を進めた。
次の日の朝、6時に起きればやっぱり熱っぽく、体温計で熱を測れば37.8と表示されていた。
嘘でしょ·····。
熱があれば、侑李の所へ行けない。
お兄ちゃんに電話をかけるも、まだ朝早いからか電話には出ず。
どうしようどうしようって思ってるうちに、体の熱がどんどん上がる気がする。
だから私はそのままベットの上で、布団で体を包ませ瞳を閉じた。
洗濯物·····。
お兄ちゃんのご飯·····。
そうじ·····。
·····あ、ゴミ捨ててない·····。
学校に休むって連絡しないと·····。
頭がぐわんぐわんと騒ぐ。
瞼も痛い。
起きるのも辛い。
熱を出すのは久しぶりだった。
熱出すだけでこんなにも体がだるくなるものだっけ·····と考え込む。考えることさえ辛いのに。
眠るってより、ほとんど気を失っていた私の耳に入ってきたのは、スマホの着信音。
重たい腕を動かし、スマホを見ると、お兄ちゃんからで·····。
『なんだ?電話くれたか?』
そう言ったお兄ちゃん。
「あの·····、今日·····、侑李のとこ行ってくれない?」
『今日?お前は?』
はあ·····と、熱い息をだす。
お兄ちゃんの声が、とても遠く感じる。
「風邪ひいたみたいだから·····」
『あー、分かった。熱あんのか?』
「うん·····」
『高ぇの?』
分からない·····。
確実に上がった気はする。
もう喋るのも辛い··········。
『密葉?』
私はまた気を失った。
遠くから、お兄ちゃんの声が聞こえた。
密葉、侑李の事を頼むわね
密葉は賢いから、分かるわね
密葉·····
密葉·····
密葉·····。
分かってる。
分かってるから。
侑李は私が守るから。
絶対に、侑李を1人にはしないから·····。
「密葉っ」
分かったってば·····
「密葉!!」
分かってるから·····。
「密葉!!」
そう名前を何度も呼ばないで·····。
虚ろ虚ろに、瞼を開く。
視界に入ったのは金の髪·····。
「お前·····大丈夫か?」
お兄ちゃん·····?
なんでここに·····
帰ってきたの?
あれ、電話は·····?
「熱いな」
私のおでこにふれるお兄ちゃんの手が、冷たくて気持ちよくて。私はまた瞼を閉じた。
「病院行くか?」
「··········大丈夫··········」
「じゃねぇだろ、6月でもインフルとかあんのか?」
「··········ないと、思う·····」
「薬は?飲んだのか?」
「お兄ちゃん·····、侑李は·····?」
お兄ちゃんは軽くため息を出した。
「侑李より、自分の心配をしろ」
ってか、今何時·····。
「お前が体調崩して、侑李が心配して、侑李が体を崩したらどうすんだ」
「··········うん」
「薬飲んでねぇんだな?病院行くぞ」
「ん··········」
お兄ちゃんに抱えられ、私は近くのクリニックに向かった。お兄ちゃんに抱えられるなんて、初めてのような気がした。
「吐きそうなら言えよ」
「··········ん·····」
高熱が出る風邪との診断だった。
家に帰り、薬を飲めば解熱剤の効果か、随分と呼吸が楽になった。
頭痛も随分楽になった。
「ごめんねお兄ちゃん·····」
小さな声を出せば、お兄ちゃんは「いいよ」と呟いた。
「あんまり頑張りすぎんなよ」
お兄ちゃんの冷たくて気持ちいい手が、私の熱い頭を撫でる。その行動に泣きそうになった。
嬉しさの反面、苛立ちという感情が心の中に芽生えてくる。
頑張りすぎなのは、お兄ちゃんが何もしないから·····。
食べ終わったあとのお皿さえ、運ばない。
全ての家事は私。
お兄ちゃんはいつも遊んでる。
カラオケとか買い物も行くんでしょ?
映画も見に行くんでしょう?
両親も·····私に任せっきり。
頑張るのは、押し付けてくるからでしょう?
3人が何もしないから、私がしなくちゃいけない。
ねぇ、そうでしょ?
侑李の事は好き。
大好き。
本当に大事な弟·····。
でもやっぱり思ってしまう。
どうして私ばっかりって··········。
私は性格が悪い。
いい子ならこんな事、思わないはずだから。
家族のことは大好きなのに·····。
私は熱い息と共に、深いため息をついた。
熱は三日後に下がった。
侑李に会いたくて会いたくて仕方が無かった私は、学校が終わった放課後病院まで走って侑李のところへ向かった。
「お姉ちゃん!!!」
この前と変わらない侑李の可愛い子犬みたいな笑顔。
その顔を見て、私は罪悪感を覚えた。
熱が出たとはいえ、私はなんて事を思ったんだろうと。
何で私ばっかり·····って思ってしまったんだろう。
「もう熱さがったの·····?」
泣きそうになっている侑李は、やっぱり可愛い私の弟。たった一人の弟·····。
「うん、治ったよ。来れなくてごめんね」
「ううん、お姉ちゃんが治って良かった!」
いつ、どうなるか分からない侑李は、風邪ごときの私に本気で心配してくれる。
「お姉ちゃん、大好きだよ」
平均よりも小さい体·····。
アザが残る点滴の跡·····。
どうして神様は、侑李を選んだの·········。
はあ·····と吐息を出し、スーパーへ寄るため足を進めた。
次の日の朝、6時に起きればやっぱり熱っぽく、体温計で熱を測れば37.8と表示されていた。
嘘でしょ·····。
熱があれば、侑李の所へ行けない。
お兄ちゃんに電話をかけるも、まだ朝早いからか電話には出ず。
どうしようどうしようって思ってるうちに、体の熱がどんどん上がる気がする。
だから私はそのままベットの上で、布団で体を包ませ瞳を閉じた。
洗濯物·····。
お兄ちゃんのご飯·····。
そうじ·····。
·····あ、ゴミ捨ててない·····。
学校に休むって連絡しないと·····。
頭がぐわんぐわんと騒ぐ。
瞼も痛い。
起きるのも辛い。
熱を出すのは久しぶりだった。
熱出すだけでこんなにも体がだるくなるものだっけ·····と考え込む。考えることさえ辛いのに。
眠るってより、ほとんど気を失っていた私の耳に入ってきたのは、スマホの着信音。
重たい腕を動かし、スマホを見ると、お兄ちゃんからで·····。
『なんだ?電話くれたか?』
そう言ったお兄ちゃん。
「あの·····、今日·····、侑李のとこ行ってくれない?」
『今日?お前は?』
はあ·····と、熱い息をだす。
お兄ちゃんの声が、とても遠く感じる。
「風邪ひいたみたいだから·····」
『あー、分かった。熱あんのか?』
「うん·····」
『高ぇの?』
分からない·····。
確実に上がった気はする。
もう喋るのも辛い··········。
『密葉?』
私はまた気を失った。
遠くから、お兄ちゃんの声が聞こえた。
密葉、侑李の事を頼むわね
密葉は賢いから、分かるわね
密葉·····
密葉·····
密葉·····。
分かってる。
分かってるから。
侑李は私が守るから。
絶対に、侑李を1人にはしないから·····。
「密葉っ」
分かったってば·····
「密葉!!」
分かってるから·····。
「密葉!!」
そう名前を何度も呼ばないで·····。
虚ろ虚ろに、瞼を開く。
視界に入ったのは金の髪·····。
「お前·····大丈夫か?」
お兄ちゃん·····?
なんでここに·····
帰ってきたの?
あれ、電話は·····?
「熱いな」
私のおでこにふれるお兄ちゃんの手が、冷たくて気持ちよくて。私はまた瞼を閉じた。
「病院行くか?」
「··········大丈夫··········」
「じゃねぇだろ、6月でもインフルとかあんのか?」
「··········ないと、思う·····」
「薬は?飲んだのか?」
「お兄ちゃん·····、侑李は·····?」
お兄ちゃんは軽くため息を出した。
「侑李より、自分の心配をしろ」
ってか、今何時·····。
「お前が体調崩して、侑李が心配して、侑李が体を崩したらどうすんだ」
「··········うん」
「薬飲んでねぇんだな?病院行くぞ」
「ん··········」
お兄ちゃんに抱えられ、私は近くのクリニックに向かった。お兄ちゃんに抱えられるなんて、初めてのような気がした。
「吐きそうなら言えよ」
「··········ん·····」
高熱が出る風邪との診断だった。
家に帰り、薬を飲めば解熱剤の効果か、随分と呼吸が楽になった。
頭痛も随分楽になった。
「ごめんねお兄ちゃん·····」
小さな声を出せば、お兄ちゃんは「いいよ」と呟いた。
「あんまり頑張りすぎんなよ」
お兄ちゃんの冷たくて気持ちいい手が、私の熱い頭を撫でる。その行動に泣きそうになった。
嬉しさの反面、苛立ちという感情が心の中に芽生えてくる。
頑張りすぎなのは、お兄ちゃんが何もしないから·····。
食べ終わったあとのお皿さえ、運ばない。
全ての家事は私。
お兄ちゃんはいつも遊んでる。
カラオケとか買い物も行くんでしょ?
映画も見に行くんでしょう?
両親も·····私に任せっきり。
頑張るのは、押し付けてくるからでしょう?
3人が何もしないから、私がしなくちゃいけない。
ねぇ、そうでしょ?
侑李の事は好き。
大好き。
本当に大事な弟·····。
でもやっぱり思ってしまう。
どうして私ばっかりって··········。
私は性格が悪い。
いい子ならこんな事、思わないはずだから。
家族のことは大好きなのに·····。
私は熱い息と共に、深いため息をついた。
熱は三日後に下がった。
侑李に会いたくて会いたくて仕方が無かった私は、学校が終わった放課後病院まで走って侑李のところへ向かった。
「お姉ちゃん!!!」
この前と変わらない侑李の可愛い子犬みたいな笑顔。
その顔を見て、私は罪悪感を覚えた。
熱が出たとはいえ、私はなんて事を思ったんだろうと。
何で私ばっかり·····って思ってしまったんだろう。
「もう熱さがったの·····?」
泣きそうになっている侑李は、やっぱり可愛い私の弟。たった一人の弟·····。
「うん、治ったよ。来れなくてごめんね」
「ううん、お姉ちゃんが治って良かった!」
いつ、どうなるか分からない侑李は、風邪ごときの私に本気で心配してくれる。
「お姉ちゃん、大好きだよ」
平均よりも小さい体·····。
アザが残る点滴の跡·····。
どうして神様は、侑李を選んだの·········。