しばらく走って、海が見えてきた。

「ええ!もう海?」

「近いだろ。俺の一番お気に入りの場所。」

先生のお気に入りと聞いて、嬉しくなる。


「先生はさ。なんで小説書こうと思ったの?」

流れに任せて聞いてみた。

「さあ。なんでかな。」

先生も流した。

「だって教師を辞めてまで、なりたいと思ったんでしょ?」

「俺、最初から教師になろうなんて、思ってないよ。」

「えっ?」


私の中にぽっかり穴が開いた感じがした。

「がっかり?そんな奴に一年間、教えて貰ってたかと思うと。」

先生はあっさり答えを言ったけれど、それだけじゃないなにかが私の心を捉えていた。


教師と言う職業は、人気があって。

誰にでもなれるようなモノじゃない。

教師になった後も、立派な教師になる為に必死に頑張っている姿は、憧れの対象だった。

もちろんそれは、私たち生徒側の勝手な思い込みにすぎないのだろうけど。