「なんでそんなに、不機嫌かな。」

「なんでここで、ウソつくかな。」

頭にきて、先生の口調真似してやった。

「自分が最初に言ったんだろ?」

手慣れた感じで、先生は車のエンジンをかける。

「それはそれ。これはこれ。大家さんに彼女って言ったら、『まあこんなに若い彼女だなんて!!』って、また根掘り葉掘り聞かれるでしょ。」

すると先生は、ラジオをかけた。

「レンタカーのお姉さんにだってそう。正直に答えたら、また変な空気になるし。」

先生はハンドルに両腕を付きながら、こっちを向いた。

「それとも正直に『彼女です。』って言って、お姉さんにじろじろ見られたかった?」


その場面を想像すると、ブルッと体が大きく震えた。

「ううん。」

「じゃあ、わかったところで出発進行。」

すると先生は、ゆっくりと車道に出た。

走りはスムーズだ。


「先生、運転上手い。」

「ははは。ありがとう。」