「じゃあ、書き直さなくていい。」

「いいのか?」

先生が、意地悪そうに私の顔を覗き込む。

そんな風にされたら、何も言えなくなる事、知ってるくせに。


「だって先生、コンクールの為に仕事もしないで、頑張って書いてるんでしょう?」

「うっ!ま、まあそうだけど、」

「間に合わなかったら、私、一生恨まれそうだもん。」

「うっははは!」

生徒は呑気に、お腹を抱えて笑っている。


「先生。こっちは心配してるのに。」

「うんうん、わかった。優しいんだよな、藤沢は。」

本当にわかってるんだか、わかってないんだか。

あまりにものんびりしてるから、つい教師だった事を忘れる。


「あー、楽しい。」

そう言って先生は、急に床に寝そべった。

「そうですか?」

「ああ。藤沢がいてくれて、毎日が楽しいよ。」

「それは、よかった。です。」

なんだか全身、くすぐったい。